IBMが生んでしまった現代PCにつながる『水平分業モデル』

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PCのCPUって、どのメーカーがPCを出そうが、ほぼインテルが入っていますよね。PC1台作り出すのに1社完結ではなく、インテル(CPU)やマイクロソフト(OS)だったりといろいろなメーカーがパーツを担当しています。

この仕組みは、IBM社がアップルに対抗するために急いで商品開発をしたことが始まりだと知っていましたか?

今回は、IBMが生んでしまった現代につながる『水平分業モデル』について紹介していきます。

目次

IBMってどんな会社?

コンピューターの市場シェアは70%

IBMはアメリカのニューヨーク州に本社を持つ、コンピューターを開発販売する会社で、大成功した企業でした。

1970年のコンピューター市場シェアは70%もあり、ハード・ソフト・OSと一体化して自社ですべてを作っていたので、圧倒的なシェアとユーザーの信頼を得ていました。

ユーザーがIBM製品以外を買わない仕組み

当時の大型汎用コンピューター市場は、ハード・ソフト・サービス一体のものであり、各社は独自のハードにプログラミング言語や専用オペレーティング・システム(OS)を提供していました。

ハードを他社製に切り替えるとそれまで自社用に作り上げた膨大なプログラムは使えなくなります。

企業のIT担当者は、プログラムを全部作り直すことを避けるので、最大手のIBM製品ばかり選ばれるようになりました。

ライバルのアップル台頭

個人用PCの登場

1977年アップルが設立され、パーソナルコンピューター「appleⅡ」が1298ドル(約14万円)で販売されました。

apple

「appleⅡ」は、世界で初めてちゃんと動く完成品のPCでした。

1978年には、フロッピーディスクドライブが595ドル(約65,000円)で販売され79年には表計算ソフトvisiculc(ビジカルク)が発売されました。

中小企業オーナーや会計士たちに支持されたPC

この2つが会計・財務データの処理に悩んでいた中小企業オーナーや会計士たちの熱狂的な支持を集めました。

売り上げ台数は年々倍増して、1982年には30万台に達してアップルに巨大な利益をもたらしました。

追い詰められたIBMは

appleの活躍に焦ったIBM

一方、IBMの開発チームにも「1年以内にPCを完成させなさい」と会社から厳命が下されました。

チームの人数はたったの12名だけでした。

当初チームはプロセッサやOSも自社開発のものを組み混んで完成させるつもりでしたが、納期に間に合わないことが分かり奥の手を使います。

プロセッサには、用意しようとしていたものに劣る性能の「インテル8088」を使用し、OSには設計が数年遅れの「マイクロソフトMS-DOS」を採用して急ピッチで1年後の発売にこじつけました。

その商品名は「IBM PC 5150」でした。

簡単にいうと、ライバルメーカーにシェアを奪われるくらいなら、他社のパーツを寄せ集めて、自社ブランドで販売しちゃえという作戦です。

シェアを取り戻すが

「IBM PC 5150」は法人向けに発売し成功しました。
その結果、IBMはアメリカPC市場シェアを42%にまで高めることに成功します。

しかし「IBM PC 5150」には現代まで続く、大きな問題が潜んでいたのです。

作り方がマネされて安価なPCが世に出回る

対抗策が裏目に出てしまった

アップル社に対抗するために「IBM PC 5150」は急ピッチで作成されました。

そのため、「IBM PC 5150」の仕様が公開されてしまい、同じような安いPCが、他社から製造販売されるようになってしまったのです。

簡単にいうとIBMとアップルが競い合っているうちにPCの構造がバレて、第三者が介入してきた結果、どっちも苦しくなったという話になります。

反対にインテル、マイクロソフト、コンパックなどのPCパーツメーカーは、バンバン発注が来るので各分野でダントツの技術力を誇るようになりました。

PC

外注を頼みすぎた結果

IBM社は、自社でOSを作らなかったせいで、専門性のあるメーカーに利益を持っていかれてしまいました。

そのため、CPU技術ならインテル、OS技術ならマイクロソフトのようにPC業界は、水平的に分化(階層化)された技術によって支えられる『水平分業モデル』が成立しました。

◆階層化されたモデルの代表例

・OS:マイクロソフトの『Windows』が基準になる

・CPU:インテルのシェアは90%

・GPU:AMD・ATIとNVIDIAが2強

・HD:ウェスタン・デジタルとシーゲイトで95%

・DRAM:サムスンがシェア40%

・マザーボード:台湾メーカー3社シェア70%

各メーカーが技術力を研き始めたため、80年代にはIBM・アップルなど3社で上位70%を占めていた寡占的業界のシェアは、90年代には32%しかない事業となってしまいました。

今まで独占していたIBM・アップルよりも、少数精鋭で自社技術を研いたインテルなど部品メーカー側の交渉力が強くなり、いいPCを作るために彼らの商品を使うしかなくなってしまったのです。

Intel

IBMが生み出した水平分業モデルによって、PCメーカーは企画と販促・マーケティングだけすればいい存在になってしまいました。

さらにIBMは、他社の優れたパーツを組み合わせて作る『水平化モデル』を作ったのにも関わらず、収益を得ることが出来ずにPC事業を中国レノボへ売却することになりました。

最後に

今回は、IBMが生んでしまった現代につながる『水平分業モデル』について紹介しました。

IBMは、ライバルのアップルに対抗するために急ピッチで開発したPC「IBM PC 5150」の仕様が公開されてしまい、他社に利益を奪われました。

またIBMとアップルによる競争の中で、CPU技術ならインテル、OS技術ならマイクロソフトのようにPC業界は、水平的に分化(階層化)された技術によって支えられる水平分業モデル』が成立しました。

PC業界全体の売り上げは『水平分業モデル』によって格段に上がりましたが、各技術を他社に頼ってしまったがために、IBMだけは儲けることが出来なかったのです。

IBMの失敗がもとになって、私たちの使っていたPCのCPUにはインテルばっかり入っていたのですね。
明日、ほとんどのPCにインテルが入ってる理由を友人家族に伝えてみてくださいね♪

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