コピー機業界の覇者ゼロックスを破った日本企業キャノン

Canon

キャノンはカメラで有名なメーカーですよね。

キャノンは、1970年代コピー機業界で1位を占めていたゼロックスをコピー機販売で破った日本企業なのです。

今回は、普通紙コピー機で特許を1100持っている鉄壁のゼロックスを打ち破った日本企業キャノンについて紹介していきます。

目次

キャノンはフィルムメーカーに利益を取られていた

キャノンと言えば、カメラのイメージが強いですよね。

実は、カメラメーカーはあまり儲からなかったのです。カメラの性能は高くて売れるのですが、販売自体は一回限りなのでコダックなどのフィルムメーカーばかり消耗品が売れていたのです。

そのためキャノンのカメラは、フィルムメーカーから「フィルム・バーナー(焼き付け機)」とバカにされていました。

カメラメーカーのキャノンがコピー機業界に参入する

キャノンは、アメリカ市場や国内企業の競争の中で、カメラだけでは儲からないと判断し、いろいろな事業や商品開発を行いました。

camera

1959年には「声が出る手紙」シンクロリーダーを開発しますが失敗します。

さらに、広大な工場・新規採用した100人のエレクトロニクス技術者・在庫の山を抱えてしまいました。

1964年には、「電卓」キャノーラの開発を行いましたが、低価格競争や品質問題で30億円もの損失が出てしまいました。

周囲の声は反対ばかり

のちのキャノン社長である賀来と山路は「失敗は成功のもとだ!」次はコピー機にチャレンジする!と決めました。

当時のアメリカでは、ゼロックスが普通紙コピー機のシェアをほぼ100%抑えており、IBMやコダックもコピー業界へ挑戦して失敗していたので、反対の声ばかりでした。

そこで、キャノンはアメリカのエレクトロニクス(電気機器・半導体)事業を中心とする多国籍企業「RCA」へ使用料を払い、コピー機の技術ライセンスを手に入れました。

EF方式(静電式湿式)と呼ばれる複写機「キャノンファックス1000」を出します。

しかし、競争力がなく10億円の赤字で、大手のゼロックスどころか国内企業のリコーにすら敗北しました。

キャノンの諦めない挑戦

キャノンは、借り物の技術ではコピー機業界では勝てないことを知り、思い切って正面突破をすることに決めました。

新技術「NP方式」の開発

ゼロックスが持っている特許1100個を潜り抜ける新技術を発明してコピー機を作ることにしたのです。

まず20人の開発部員を用意して、英語で書かれたゼロックスの特許をすべて調べ上げ、1100件の特許を侵害しない「NP方式」と呼ばれる技術を開発することに成功しました。

1970年、ゼロックスのコピー機とは違う技術で「NP-1100」の開発に成功します。

Copy-machine

やっとヒット商品が生まれるが

NP-1100は売れませんでしたが、後継機であるNP-7はヒットしました。

しかし売り上げは、まだまだゼロックスには及びませんでした。

◆1970年代末の普通紙コピー国産生産金額

・日本ゼロックスは1400億円

・リコーは1300億円

・キャノンは400億円強


参照:ビジネスモデル全史

負け続けた結果

キャノンの賀来は、あるとき技術者の田中に質問をしました。

会話からアイデアが誕生

賀来:なぜ、販売網で敵と差がつくのだろう?

田中:それは、商品が高くて大企業しか買えないからです。さらに官公庁や大企業のコピー機はゼロックスが抑えていますから。

賀来:じゃあ、サービスで差がつくのはなんでだろう?

田中:故障のメンテナンスが難しいからです。わたしたちキャノンはサービス部隊をもっていませんから。

この会話をもとに、賀来は安くて故障しない商品、そしてメンテナンスが簡単な商品を開発することにしました。

さらにキャノンは、コピー機を超小型化して本体を安くすることに決めました。

こうして出来がったのが「ミニコピアPC-10」でした。

Copy-machine

本体を安く売ってインク代で儲けるビジネスモデル

ミニコピアの特徴は、小型であり主要部品をカートリッジ式にして「修理する主要部品」から「取り替える消耗品」にしました。

本体を安く売って、交換式のトナーインク代を高めに設定して儲ける「替え刃モデル」方式を取り入れたのです。

キャノンが小型コピー機で成功した理由

企業から家庭に届くコピー機へ

キャノンが開発した小型コピー機「ミニコピア」は年間700億円を売り上げる大ヒット商品となり、「事業所に1台」から「フロアで1台・1課に1台」と使いやすいコピー機文化を作り上げました。

官公庁や大企業にしかなかったコピー機が小型化し、各家庭に1台というようにドンドン浸透していきました。

キャノンが成功した理由は、もともとカメラメーカーだったので光学と機械技術を持っていたこと、電子技術は「声の出る手紙:シンクロリーダー」を開発するときに雇っていた100人の技術者が活躍したことです。

コピー機業界の覇者ゼロックスを倒す

1100個の特許を持ち、コピー機業界史上最強と呼ばれたゼロックスですが、キャノンがコピー機業界に参入してきたことをきっかけにリコーやミノルタなどの企業が続き、1975年にはアメリカ企業の訴えで特許独占が出来なくなりました。

ゼロックスの普通紙コピー機市場シェアは急落し、1982年には13%になってしまいました。

最後に

今回は、普通紙コピー機で特許を1100個持っている鉄壁のゼロックスを打ち破った日本企業キャノンについて紹介しました。

キャノンは、アメリカ市場や国内企業の競争の中で、カメラだけでは儲からないと判断し、いろいろな事業や商品開発を行いました。

「声が出る手紙」・「電卓」・「技術を借りたコピー機」など数々の失敗を経験したキャノンですが、めげずに挑戦し、ゼロックスの持つ特許を研究し続けた結果、自社技術でコピー機の発明に成功します。

さらに官公庁や大企業へ納品している大型コピー機とは別に、個人用の小さなコピー機を開発し、インクカートリッジで儲ける「替え刃モデル」を導入し大成功します。

わたしたちが、家庭でコピー機を気軽に使えるのは、キャノンの諦めない挑戦のおかげだったんですね。

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