LCC(ローコストキャリア)は、直訳すると格安航空会社になります。
航空チケットが格安になった陰には、裁判費用に追われたサウスウエスト航空の涙ぐましい努力があったのです。
今回は、業界でもトップクラスの待遇で社員に給与を支払っているサウスウエスト航空が、なぜ格安航空チケットを提供することが出来たのか?を紹介していきます。
LCCはサウスウエスト航空が始めたビジネスモデル
格安航空会社の始まり
LCCとは、ローコストキャリアの略であり、低価格航空会社のことを指します。
サウスウエスト航空は、1971年に3機のボーイング737でアメリカテキサス州の3都市を結ぶサービスを始めます。
サウスウエスト航空は弁護士が育てた会社
弁護士として設立にかかわったハーバート・ケレハーは、顧客が常に正しいとは限らない「顧客第二、従業員第一主義」を掲げます。
仕事は楽しくなければならない、空の旅も面白くなくてはならないという理念の元にサウスウエスト航空を世界屈指の優良航空会社に育て上げました。
ケレハーは、人件費水準を全米トップレベルに維持したまま、競合より低価格で高品質のサービスを提供することに成功します。
稼働率上げ清掃時間を短縮した「10分ターン」
無駄をなくしてフライト件数を上げる
サウスウエスト航空は、機材が地上に駐機している時間を競合の4分の1以下に減らし、1機が1日に飛べるフライト数を増やしました。
乗客の乗り降り、機内の清掃・給油点検を他社が45~60分かけて行っていた作業を10分に短縮して、飛行機を10分でターンさせることにしたのです。
10分ターンのおかげで、サウスウエスト航空の機材は、1日11時間半も飛べるようになり、8時間半しか飛ばない競合の機材4機分の仕事を3機でこなせるようになりました。
法廷闘争と資金不足の末に生み出された「10分ターン」
サウスウエスト航空は、1967年に3都市間の路線許可を得ようとした際に、既存の航空会社に邪魔されて大々的に訴えられてしまいました。
最高裁で勝訴したのですが、裁判にかかった費用で当初の運用資金は底をついてしまいました。
定期点検のためにカラの飛行機をヒューストンからダラスに飛ばす必要があったとき、もったいないと考えた社長のラマー・ミューズが、半額の10ドル(約1,102円)で客を乗せる施策を打ちました。
このチケットを安くしたプランは大当たりし、利用客が増えました。
ビジネス客には平日19時までを26ドル(約2,865円)に、平日19時以降と週末には13ドル(約1,433円)にする時間帯別料金を作り上げて大成功します。
また足を引っ張られるサウスウエスト
4機稼働予定が3機のみになってしまうピンチ
やっと黒字化したサウスウエスト航空は、もう1機購入してスピードアップと州外チャーター便の展開を考えていましたが、恨みに思っていた競合他社から横やりが入り、追加予定の1機が手に入らなくなりました。
運航計画はすでに4機体制で組んでしまっていたので、3機で4機分の働きが出来なければ運航停止になってしまう絶体絶命の危機に襲われました。
ピンチを救ったのはプライドのない機長とCA
サウスウエスト航空は、3機で4機分の働きが出来なければ運航停止になってしまう絶体絶命の危機に襲われましたが「10分ターン」によって救われることになります。
「10分ターン」は、競合他社がマネができない仕組みでした。
その大きな理由は、従業員のプライドでした。
機長やCAは清掃しないのが航空会社の常識でしたが、サウスウエスト航空の機長やCAたちは大手航空会社をリストラされたスタッフが大半だったので、「やっと再就職した会社をつぶすわけにはいかない!」と何でもやる姿勢でいました。
CAに関しては、元チアリーダーだったり、地上作業員はほぼ素人だったので常識がそもそもなかったことも「10分ターン」にいい影響を与えました。
10分ターンはレースカーのピッド作業から学んだ技
10分ターンの実現のために、参考にしたのが世界最速のカーレース「インディ500」のピッド作業でした。
周回数が200を数える中、レースカーはピッドに6回以上入り、そこでの0.2秒×6回の遅れが120メールのリードを帳消しにします。
ケレハーは、迅速なピッド作業とチームワークを学び、サウスウエスト航空の従業員に「各自の判断に従って行動させる」現場第一主義を教えました。
現場の意見を大切にする企業理念に感動したスタッフたちは、一層努力をしてサウスウエスト航空を支えました。
こうしてサウスウエスト航空は、スタッフの努力と無駄を排除した業務効率のおかげで、格安航空チケットを提供することが出来るようになりました。
最後に
今回は、業界でもトップクラスの待遇で社員に給与を支払っているサウスウエスト航空が、なぜ格安航空チケットを提供することが出来たのか?を紹介しました。
LCCとは、ローコストキャリアの略で、低価格航空会社のことを指しサウスウエスト航空が3つの飛行機から始めたビジネスモデルです。
サウスウエスト航空は、仕事は楽しくなければならない、空の旅も面白くなくてはならないという理念の元に、機材が地上に駐機している時間を競合の4分の1以下に減らし、1機が1日に飛べるフライト数を増やす「10分ターン」を導入して大成功しました。
サウスウエスト航空の機長やCAたちの大半は、大手航空会社をリストラされており「やっと再就職した会社をつぶすわけにはいかない!」とプライドを捨て通常業務に清掃を加えて会社を支え続けました。
サウスウエスト航空は、競合に追い詰められてお金が尽きた結果、低価格航空会社(LCC)として生き抜くことが決まり、格安チケットを提供することが出来るようになったのです。