離職率250%の職場を改善したメイヨーの『人間関係論』

人間関係論

離職率250%とは、毎月従業員の2割が辞めていく計算になります。

そんな会社あるの?と思うでしょうが、1923年アメリカ、フィラデルフィアの紡績工場で実際にあった話なのです。

今回は、離職率250%だった紡績会社を離職率5%までに改善させたメイヨーの『人間関係論』について紹介していきます。

目次

エルトン・メイヨー

紡績工場を分析する

人間関係論を作ったエルトン・メイヨーは、オーストラリアで医師の息子として生まれ、医学、心理学、哲学を学びアメリカのペンシルバニア大学で「産業精神衛生」の研究をしていました。

メイヨーは、1923年にフィラデルフィアの紡績工場が困っていることを知り、研究をすることになります。

その工場では、離職率は5%程度でしたが、最新鋭の紡績機械を扱うミュール紡績部門だけ離職率250%と異常な数値を出していることに気付きます。

紡績機械ミュール
※紡績機械ミュール

離職率250%とは

離職率250%とは、毎月従業員の2割が辞めていく計算です。

離職率が高い理由は、仕事の「単純さ」と「孤独さ」からくる精神的疲労が原因だと考えたメイヨーは、従業員たちにもっと休憩を取らせるように会社へ提案しました。

早速、労働者側に働きやすい環境を作るため「休憩時間をどうとるか?」を考える話し合いをしてもらうことにしました。

労働者側から出た休憩時間の提案は、1日4回10分ずつの休憩を交代でとること、休憩をとる順番は相談して決めることでした。

数か月後に結果を測定すると、メイヨーの指摘の通り、ミュール紡績部門の離職率が250%から5%に改善され、さらに生産性もアップしたのです。

解放

良い結果をだしたメイヨーでしたが、休憩時間だけではない何か別の理由も隠れていると考えるようになりました。

ホーソン工場の実験

6人の労働環境実験

1927年にハーバード大学にいたメイヨーは、電話機製造会社ウェスタン・エレクトリックのホーソン工場で実験に取り組みます。

メイヨーは、100人の女工さんから優秀な6人を選んで実験チームを作りました。

実験チーム

この6人には、労働環境を良いもの・悪いものに変えて生産性がどうなるかの実験を行いました。

  • 賃金が安い・高い
  • 軽食の提供の有無
  • 休憩時間
  • 部屋の温度を18℃と35℃にする。

実験の結果、驚くことにいずれの実験結果も6人の生産性は、下がるどころか上がっていました。

労働条件がどう変わろうと選ばれし6人のプライドが生産性を上げたので、メイヨーはさらに深い実験を行うことにしました。

工場員2万人の聞き取り調査へ

メイヨーは、選ばれし6人の実験結果に驚き、1928年に従業員に対する聞き取り調査を行うことにしました。

当初は1600人が対象でしたが、最終的に工場全体2万人以上の面談をすることになりました。

面談

聞き取り方法も、当初は決まっていましたが途中から現場マネージャーが面接を行うようになり、面接も自由に会話する雑談のようなものに変わっていました。

全従業員の面談を終えたころには、工場全体の生産性は向上していたのです。

メイヨーは、従業員は話しているうちに自分の不満が根拠のあるものなのかどうかを自ら理解し、現場マネージャーは聴くうちに部下たちの状況を把握し対処することで自らを高めることができたのだと結論づけました。

メイヨーの人間関係論

人間は職場環境よりも人間関係に影響を受ける

メイヨーは、ミュール紡績工場で従業員たちが休憩時間を決めたことが離職率を軽減させた要因であったと考えました。

また、電話機製造会社ホーソン工場での選ばれし6人と、工場員2万人の聞き取り調査から、人間は客観的な職場環境の良し悪しよりも職場での人間関係に影響を受けると考えました。

人間関係

◆メイヨーの人間関係論とは?

①ヒトは経済的対価より、社会的欲求の充足を重視する。

②ヒトの行動は合理的でなく感情に大きく左右される。

③ヒトは公式(フォーマル)な組織よりも非公式(インフォーマル)な組織に影響を受けやすい

④ヒトの労働意欲は、客観的な職場環境の良し悪しより、職場での(上司や同僚との)人間関係に左右される。

ヒトはパンによってのみ生くるにあらず

メイヨーの実験により、労働環境や条件は生産性に強く関係していないことがわかりました。

また、会社で定めたルールや仕組みを押し付ける厳格な上司よりも、チームや個人の状況に裁量権を与えてくれる上司のもとでこそ士気も生産性も上がるということになりました。

感情

生産性向上というテーマでは、コスト・効率に「ヒトの感情」が追加されることになりました。

人間関係論はいろいろな研究の基礎になっている

メイヨーの人間関係論は、「産業社会学」と「行動科学」という学問を生み出しました。

さらにモチベーション研究・カウンセリング研究・リーダーシップ研究、提案制度、小集団活動など多くの研究の基礎になりました。

最後に

今回は、離職率250%だった紡績会社を離職率5%までに改善させたメイヨーの『人間関係論』について紹介しました。

人間関係論を作ったエルトン・メイヨーは、オーストラリアで医師の息子として生まれ、医学、心理学、哲学を学びアメリカのペンシルバニア大学、スタンフォード大学、ハーバード大学で研究をしていた人物でした。

メイヨーの作った人間関係論とは、人間は客観的な職場環境の良し悪しよりも職場での人間関係に影響を受けるというものでした。

また、会社で定めたルールや仕組みを押し付ける厳格な上司よりも、チームや個人の状況に裁量権を与えてくれる上司のもとでこそ士気も生産性も上がるということが分かりました。

紡績工場の離職率が高い理由を、仕事の「単純さ」と「孤独さ」からくる精神的疲労が原因だと考えたメイヨーは、従業員の意見を大切に扱い、従業員たちに休憩時間を決めさせることで離職率250%から5%にまで改善させたのです。

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